自分もアトピーだから言えることですが、周りの人やネットで見かける体験談などを見てアトピーの人、あるいはその親は『QOL』を軽視しがちではと思うことがあります。
また心理学の法則のひとつに『ジャネーの法則』というものがあり、この法則と組み合わせて考えるとひとつの結論が導き出せます。
長くつらい治療や生活の質を落とす治療はやめるべき
これはあくまで私の考えなので、絶対にそうしろとまでは言えません。
けれど、
・アトピーの子どもを持っている親
・アトピーの家族を持つ人
は、1度この『QOL』と『ジャネーの法則』について考えてみて欲しい。
QOL(Quality of Life)
QOLとは
クオリティ・オブ・ライフ(英: quality of life、QOL)とは、一般に、ひとりひとりの人生の内容の質や社会的にみた生活の質のことを指し、つまりある人がどれだけ人間らしい生活や自分らしい生活を送り、人生に幸福を見出しているか、ということを尺度としてとらえる概念である。
どれだけ自分らしく、そして幸福に生きるかという考え方です。
QOLでは特に物理的な質よりも、精神的な質を重視し目指します。
どういったことに幸福を感じるかは、人によって異なるため、QOLを考えるには主観的に考えなくてはなりません。
医療におけるQOL
ただ病気を治すことを目的とするのではなく、身体的・精神的な苦痛を軽減することにっよって、自分らしく幸福な生活を送れるようにすることを目的にする考え方です。このように生活や精神的な質を高めることを、QOLの向上といいます。
そもそも病気を治療するのはなぜでしょうか?
病気を治すことが目的なのでしょうか。いや、そうでは無いはずです。病気に伴う苦痛やリスクを取り去ることが目的であるはずです。
苦痛が増したり生活の質が落ちてしまうような治療は、むしろQOLの低下を招く可能性があります。
治療法を選ぶ際にはこのQOLについて考え、総合的にQOLが向上する治療法を選択する必要があります。
アトピーは皮膚疾患の中でも最もQOL(生活の質)を損なう疾患
この事実を知って愕然としてしまいますが、事実は受け止めなくてはなりません。とはいえ、自身がアトピーであるという人であれば、そうだろうなと思う所もあると思います。
・かき傷や痒みによる精神的、身体的ストレス
・外見への苦悩による精神的負担
・通院やスキンケア商品による経済的負担
・スキンケアなどに費やされる時間
・かゆみ止め(抗ヒスタミン薬)の眠気による生活の質の低下
など
『アトピー性皮膚炎の症状は、あなたの生活の質(QOL)や精神面にどの程度マイナスの影響を与えていると思われますか。』というアンケートでは「非常に影響がある」が27%、そして「死んでしまいたいと思ったことがある」が13%だったそうです※参考1。
癌などのように死んでしまう訳ではありませんが、死ぬほどつらい病気なのです。しかも、完治が難しい病気でもあります。
そのため、アトピー治療ではどれだけQOLを向上できるか、という観点が最も重要視されるべきだと思います。
参考1:アトピー性皮膚炎はDisease Burden(疾病負荷)が大きい
参考2:アトピー性皮膚炎女性患者のQOLは化粧によって向上する
参考3:かゆみによるパフォーマンスへの影響
ジャネーの法則とは
主観的に記憶される年月の長さは年少者にはより長く、年長者にはより短く評価されるという現象を心理学的に説明した。ジャネの法則とも表記する。
人生において時間の長さは、子どもの時のほうが長く感じるという法則です。
この法則によると、なんと10歳で人生の半分を終えているそうです。
この計算は何歳まで生きるか、で計算するかによっても多少計算結果はずれますが、おおむね10歳~20歳には人生の折り返し地点に到達しているということなのです。
・1年は50歳の人にとって、人生の1/50
・1年は5歳の人によって、人生の1/5
→ 5歳にとっての1日は、50歳にとっての10日にあたる。
若いときの時間は人生にとって大切な時間
時間の価値は一様では無いということです。
若いときの時間のほうが、年を取ってからの時間よりも価値があるということです。
言い換えると、今この時この瞬間がこれからの人生において最も価値のある瞬間であるということです。
『QOL』と『ジャネーの法則』を組み合わせて考える
若いときのQOLは最も重視されるべき
さて、ここまでくれば気づいたと思いますが、若いときや子ども時代のQOLは最も重視されるべきということです。
子ども時代(特に未成年の時代)は、人生において最も価値がありその後の人生においても思い出や記憶に残ります。
そのため、子ども時代にどれだけ質の高い生活を送れるかというのは人生において非常に重要だと言えます。
子ども時代の経験はその後の人格形成にも大きく関わります。特に外見は大きな悩みだと思います。私もそうでした。
外見が原因で自信がなくなり、自己肯定感が低くなってしまう場合があります。自分に自信がなくなると、恋愛などにも心理的に抵抗が出てくる人もいると思いますし、モデルや俳優など外見が重視されるような将来の夢を持つのが難しくなってしまいます。
あるいは、外出するだけでも抵抗感がある場合もあります。
そのため治療方法を考えるときも、つらい思いや生活の質を下げる方法をなるべく減らし、より健康的な外見を保てる治療方法を採用するべきだと思います。
積分で考える
治療法の選択には、さらにQOLの向上をジャネーの法則と組み合わせて考える必要があります。
例えば以下のようなケースを考えてみます。
② すぐにある程度改善するが、治療を継続しなければならない治療法
どちらの治療法を選択すべきでしょうか。
①の治療法は将来的には改善するため、一見こちらを採用すべきに見えますが、果たしてそうでしょうか。
この問いについて、被験者の年齢によっては、①の選択をした場合に人生の大部分を犠牲にしてしまう可能性があります。
具体的にはジャネーの法則を当てはめると、若いときに①の選択をしてしまうと、人生の半分程度の時間(あくまで体感時間)が犠牲になってしまうのです。おおよそ10代、20代の間の選択としては避けるべきと思います。
グラフ化してみる
以下のような価でグラフ化してみます。
→ 10年間はQOLの値が1、10年後は10
② すぐにある程度改善するが、治療を継続しなければならない治療法
→ ずっとQOLの値が8
普通に計算した場合
大きく改善したあとから年を追うごとにトータルのQOLの差が縮まっています。
40歳の時点で、①の合計が310、②の合計が320となりました。
ジャネーの法則を適用した場合
若いときの差がすさまじく、大きく改善したあとも差はほとんど縮まりません。
40歳の時点で、①の合計が16.42、②の合計34.23がとなりました。
※ ジャネーの法則に従い、1歳で1、2歳で0.5、3歳で0.33をかけているので全体の価は小さくなっています。想定的に見てください。
それだけ若いときのQOLは大事ということです。
可能であればやめたほうが良いと思うこと
以上を踏まえ、これはやめておいたほうが良いと思うことを挙げたいと思います。
眠気の強いかゆみ止め(抗ヒスタミン薬)を飲むこと
強い眠気を伴う薬の常用は避けるべきだと思います。可能なかぎり、内服薬以外での対処を模索すべきです。
もし服用するのであれば、強い眠気を伴う第1世代の抗ヒスタミン薬は避けて、第2世代以降の眠気があらわれにくいものを選ぶことをおすすめします。
私の青春時代は眠気との戦いでもありました。朝も起きれず、授業中ましてや部活の最中でも意識はもうろうとしていました。そのような状態は、貴重な時間を希薄させていることに他なりません。
たとえかゆみが抑えられたとしても、生活の質においては著しく低下していたと言わざるを得ません。
医者に処方された薬を何も考えずに飲んでおり、自分は眠くなりやすい体質なのだと勘違いしていました。実は薬のせいだと気づくのにとても時間がかかりました。。
今はなるべく飲まないか眠気の少ない薬を服用しています。
世界はこれほどくっきりしていたのか。
脱ステロイド
自分の場合は、幼少期に親が私に脱ステロイド治療をしていたと聞いています。今でも後悔していると聞いています。私は今は皮膚科でステロイド薬を処方してもらい、ある程度の状態を保っています。
知り合いなどで脱ステロイドをしているという人は、皮膚の状態がなかなかつらい状況の人が多く自分もつらくなってしまいます。
特に20代の女性などの場合、一番外見が気になる年頃だというのに、脱ステロイドで肌がかさかさでとてもかゆそうにしている姿を見ると、ステロイド使えば良いのにと思ってしまいます。(ステロイドが効かない体質の場合はしょうがないですが。)
20代という全盛期の外見を犠牲にしてまで、直るか直らないかわからないし、非常につらいこの治療をする価値ははたしてあるのでしょうか。完治する保障も無いですし、もし30代40代で完治したとしても、もう20代のころのように行動はできないのです。
年を取ったあとでは行動力も落ちますし、恋愛なども20代と比べるとしづらくなっていることでしょう。
10代などの子どもではなおさらです。青春時代を犠牲にするということが、どれほどもったいないことか。本当に今その治療をすべきですか?
まとめ
若いときの時間は貴重です。
この時代はなるべく快適に自分らしく生きられる方法を1番に考えてあげたほうが良いと思います。
ステロイド薬はリスクも伴いますが、使いかたさえ間違わなければQOLは向上できます。またかゆみ止め(抗ヒスタミン薬)の使用はよく考えて使用することをおすすめします。
治療は何が目的なのか、あらためて考えてみてください。
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